バイオリンの購入について – 初心者のためのよくある質問(FAQ)
初めてバイオリンを弾く生徒さんに、よくこのような質問を聞かれます。
「バイオリンの値段はいくらくらいですか?」
「どこでバイオリンを買えますか?」
「どのブランドのバイオリンを買えばいいですか?」…等々
今回は、そういった皆様のお声を反映し、バイオリン初心者の方に役立つ情報を説明いたします。
下記の見出しにある疑問を1つでも抱いたことのある方は、是非ご覧ください。
見出し
- どこでバイオリンを買えますか?
- バイオリンの値段はいくらですか?
- ネットでバイオリンを購入できますか?
- いつ買えばいいですか?
- いつレンタルすればいいですか?
- どこでレンタルができますか?
- どうやってバイオリンを選べばいいですか?
- どのブランドを購入すればいいですか?
- どのサイズのバイオリンを買えばいいですか?
- 子供が次のサイズに移行するタイミングは、どう判断すればいいですか?
- 全てのサイズのバイオリンを買いたくないです。サイズを飛ばしてもいいですか?
- 大人ですが背が低いです。小さいバイオリンで演奏できますか?
- 左利きですが、左利き用のバイオリンを使用した方が良いですか?
- バイオリンの音が近所迷惑にならないか心配です。エレクトリック(電気)バイオリンで練習した方が良いのでしょうか?
どこでバイオリンを買えますか?
バイオリンを買い始める前に、レンタルした方が良いか一度考えてみてください。
購入する事に決めたのであれば、購入するにあたり、基本的なルールがいくつかあります。
- バイオリンを試奏せずに購入するのを避けましょう(「ネットでバイオリンを購入できますか?」をチェック)
- バイオリンについて知識がある人と一緒に行きましょう(講師など)
- お店で購入する時は、弦楽器を専門とするお店に行きましょう(バイオリン、ビオラ、チェロ等)。ギターや管楽器等を販売しているお店は避けましょう。
全くバイオリンに詳しくない方は、まず初めにバイオリンに詳しい人を見つけてください。
プロや音楽学校の生徒の友人がいれば、そちらに聞くのもいいですが、中々いないと思うので、普通は講師を探し、その講師に楽器選びを手伝ってもらう事を意味します。
私含め多くの講師は、これを仕事の一環と考えるので、追加料金等はかかりません。
手伝ってくれる人を見つけたら、近くのバイオリンショップに行きましょう。
ギターショップと違い、バイオリンショップでは、バイオリンを正確に調整してくれる職人が店内にいるのと同様に、知識豊富なスタッフがいます。
バイオリンの値段はいくらですか?
バイオリンは非常に高価なものです。
職人が最初から最後まで手掛けたバイオリンは、通常60万円〜になり、プロのバイオリニストは大体250〜600万円のバイオリンを使用しています。有名な職人が手掛けた歴史的価値があるバイオリンは、数10億円します。
しかし、初心者用のバイオリンなら、およそ6〜60万円で見つける事ができます。
以下に、各価格帯のおおよその内訳を紹介します。
バイオリンの価格帯の内訳
30000円以下(弓と付属品を含めたセット)
こちらは、使い物にならないレベルのものであり、Amazon等のオンラインサイトのみで購入でき、評判の良いお店では販売しておりません。これらのバイオリンは、演奏できない保障があるといってもいいくらい、沢山の問題を抱えています。お金を無駄にしないでください。
30000~60000円(弓と付属品を含めたセット)
こちらも、使い物にならないものが殆どです。この価格帯のバイオリンは大抵、品質の悪い木材と悪い製造方法で作られた工場製のバイオリンになります。短期的には演奏できるかもしれませんが、音もあまり良いものでなく、元々の所有者が手放すまでの期間+数年しか持たないように作られている事が多いです。このように寿命が短いため、買い替え時に売っても、全く価値がありません。このレベルのバイオリンから始めた人の多くは、次のレベルの楽器から始めた人よりも、自分の音に不満を抱いて辞めてしまう可能性が高いです。
これよりワンランク上の中古バイオリンも、このカテゴリの最上位に位置する可能性はありますが、状態の悪いものが多いので、この中から使える楽器を選び出すには、それなりの知識が必要です。
販売者や前の所有者にもよりますが、これらのバイオリンは、駒が歪んでいる/正確に切られていない、チューニングペグが回らない、ナットが正確な高さにヤスリで削られていない、古い/悪い性質の弦である等、ひどい状態であるかもしれません。上記の問題を解消するには、少なくとも15000~20000円がかかるため、事実上、次の価格帯のバイオリンになってしまうのです。
70000~100000円(弓と付属品を含めたセット)
こちらは、実際に使用できるバイオリンの最安値となります。これらのバイオリンは、基本的に中国やルーマニアの工場で作られたバイオリンですが、材料の品質や製造方法は、バイオリンを製造するのに必要最低限のものより、少し上回ったものとなります。ただし、やはりこのような低価格のルーマニア製のバイオリンは、使い捨て用に作られているため、注意が必要です。
子ども用には、基本的にこの価格帯のバイオリンを購入することをオススメします。とても小さいサイズでは、より質の高い職人技が生かされていたとしても、音の変化が少ないからです。
高品質な1/4や1/2サイズのバイオリンをわざわざ作る職人は少ないので、入手できない可能性もあります。フルサイズのバイオリンは、次の価格帯にいく準備ができるまでは、品質がより良いバイオリンをレンタルする事をオススメします。
150000~300000円
この価格帯は、高級ブランドのバイオリンや、古くからあるドイツ工房製バイオリンも含まれます。これは、フルサイズのバイオリンを購入するにあたり、最安値の価格になります。材料もより高品質なものを使用され、職人の技もより丁寧になっています。
この価格帯から、バイオリン製造方法が工場生産(工場製)から手作業(手製)へと徐々に移行されていきます。低価格のバイオリンが壊れると、修理するのに莫大な費用がかかりますが、この価格帯以上のバイオリンは、修理する事にも価値があり、寿命が長くなり売った時の価値が高くなります。
この価格帯では、弓と付属品は基本的に含まれていないので、少なくとも弓にも40000~80000円かかることを覚えておいてください。また、この価格帯ではカーボンファイバー製の方が、価格もあまり変わらない木製の弓より、はるかに良い事を忘れないでください。
この価格帯のバイオリンは、あまり本格的でない、バイオリンを趣味にしたい人には向いていますが、本格的に学ぶ人は、演奏者として成長するための深みが足りないと感じるかもしれません。
これらのバイオリン3つは、1890年から1920年の間にドイツの工房で作られました。
400000~600000円
この価格帯は、高級な工房製のバイオリンを含みます。上記の価格帯(15~30万)と同じ技法で作られたバイオリンですが、より慎重に作られ、最高級品として選ばれたものになります。木材も選び抜かれたもので、ニスもより質の高いものを時間をかけて塗られています。
バイオリン中級者にとっては、一生手放せなくなるかもしれないくらいの良質な楽器になります。このレベルのバイオリンを購入する事に強い決意があるならば、初心者は品質の違いを見分ける事ができないので、試奏する時は必ずバイオリンに詳しい人と一緒に行くことをオススメします。
ネットでバイオリンを購入できますか?
買えますが、買わない方が良いです。
ネット上に低価格で演奏可能なバイオリンも販売されていますが、修理費用がかかる、あるいは修理さえできない等の深刻な問題を抱えたバイオリンが圧倒的に多いです。
Amazon等のサイトで購入できる最安値の楽器(20000円以下)は、使い物にならないレベルであり、これまでも今後も一切演奏できないものになります。従って、いかなる場合でもこのような楽器は避けましょう。
次のレベル(20000~40000円)にいく時は、初心者レベルの中古バイオリンを見つける事ができます。一部は使用可能なものもありますが、粗末な扱いが原因で、多くのものが職人による専門的な調整が必要になります。通常、この費用は、元のバイオリンの値段に15000~20000円追加されたものになります。
更に、初心者レベルのバイオリンは、数年しかもたない様に製造されており、このレベルのバイオリンの修理費用は、通常バイオリンそのものの費用より高くなります。訓練を受けた職人でさえも、写真からではバイオリンの真の状態を見極める事が難しいので、本質的にこのようなバイオリンを購入することはギャンブルに近いです。
この事態を更に悪化させるのが、殆どの店舗は返品規約がないという事です。すなわち、質の悪いバイオリンを誤って購入したとしても、返品できる方法がありません。
ただ、バイオリン専門店の多くはネットでバイオリンを販売しています。
これらのバイオリンは、他のネットサイトで販売されている楽器より少々高いですが、基本的に正しく調整され、演奏可能であることが保証されています。また、何か問題がある場合は、たいていお店で対応してもらえます。
しかし、もし可能ならば、購入する前に直接お店に行き、試奏する方が良いです。(こちらをチェック:どこでバイオリンを買えばいいですか?)
いつレンタルすればいいですか?
あなたが今からバイオリンを始める大人である場合は、基本的に中級バイオリンに相当な金額を費やすくらいバイオリンを弾き続けたいと確信するまでは、レンタルする事をオススメします。
大人の生徒の殆どは、4~10ヶ月の間にバイオリンを学ぶのを諦めてしまいます。その場合、レンタルにかかる費用は、バイオリンを購入する費用より安くなります。
子どもがバイオリンを学ぶのであれば、8つの分数バイオリンがあるので、全てのバイオリンを購入するよりも(売っても価値はほとんどありません)、レンタルする方が良い事の方が多いです。特に子どもの大きさとバイオリンのサイズが合わない時は、大きいサイズを購入し、成長するまで待ちたくなるという事が多いからです。
いつ買えばいいですか?
今後も長い間バイオリンを弾き続けると確信できる時がきたら、購入するのは適切か、自身の講師に相談すると良いでしょう。
レンタルし続けるという事は、いずれ自分のバイオリンに大金を支払う可能性があるのに、自分のものでない低品質なバイオリンにお金をつぎ込む事を意味します。
初級レベルの大人は、通常1年以上レンタルしてから、バイオリンの購入を検討するのが良いでしょう。興味の度合いにもよりますが、20万円以上のものであれば満足できるかもしれません。子どもの場合は、通常12歳辺りでフルサイズに移る時に、最初の楽器を購入します。
何年間も弾き続けており、今後も続ける可能性が高いのであれば、中級レベルのバイオリン(40万〜60万円)を購入する、またはプロの道に進んでいるのなら、より高いレベルのバイオリンを検討するのが良いでしょう。
そして忘れてはいけない事があります。バイオリンを購入する時は、必ず弦楽器専門店で購入し、最適なバイオリンを選ぶのに手伝ってくれる、バイオリンに詳しい人と一緒に行ってください。
どこでバイオリンのレンタルができますか?
多くの国では、バイオリンショップがレンタルを行う事が一般的です。(特に子供用のバイオリン)
一部では下取り制度を実施しているところもあり、小さいバイオリンを下取りに出すと、次のサイズに移行するためのクレジット(金券やポイント)が貰えます。
残念な事に、この方法は日本では一般的ではありません。レンタルできるお店があったとしても、値段は異常に高く、最低レンタル期間が長いです。
多くの講師(西宮国際バイオリンスタジオも含み)はお手頃な価格でレンタルしますが、残念ながら日本はレンタルが一般的ではないので、最終的にはレンタルをするかしないか関わらず、購入せざるを得ない場合があります。(どこでバイオリンを買えばいいですか?)
どうやってバイオリンを選べばいいですか?
初心者の場合は、自分で選ぶのではなく、講師かバイオリンに詳しい人に相談するのが良いでしょう。
詳しくは、以下2つの回答をご覧ください。
どのブランドを購入すればいいですか?
バイオリンを買う時は、ブランドの事は完全に忘れましょう。
弦楽器は、現代の商品とは対照的に、ブランド名があるからといって、品質が保証されるわけではありません。
実は、その逆なのです。ブランド名があると、そのバイオリンが低品質であることが保証されています。
これらのよくあるブランドは子どものバイオリンに向いているので、真剣に取り組む中高生や大人の生徒は、より高品質なバイオリンを探した方がいいです。
なぜかというと、質の良いバイオリンは工場生産でなく、手作業で作られているからです。
ブランド名があるバイオリンは、多くの場合、工場の機械で(部分的または全部が)作られた証拠となり、一方で質の良いバイオリンは工房で手作業で作られています。最高級のバイオリンは最初から最後まで1人で作られ、職人の名前だけがバイオリン内に記されています。
バイオリンの初級・中級レベルの違いについては、こちらの質問をご覧ください。
どのサイズのバイオリンを買えばいいですか?
12歳以上の場合は、フルサイズのバイオリンで弾いた方が良いです。(大人の場合はこちらをチェック: 大人ですが背が低いです。小さいバイオリンで演奏できますか?)
こちらが、子どもの一番小さいサイズから大きいサイズのバイオリンになります。
1/32(稀), 1/16, 1/10, 1/8, 1/4 ,1/2, 3/4, と 7/8 (稀)
適切な子どものサイズは、子どもの身長と腕の長さによって変わります。
お子さんには絶対に大きすぎるバイオリンを買わないでください!!
バイオリンは、後で子どもが成長して着れる洋服とは違います。
大きすぎるバイオリンだと、子どもの指は弾きたい場所に届くまで、遠くに伸ばさなければならない事、バイオリンが重すぎる事、弓が長すぎるため弓の先端に届く事が難しいなどの多くの問題があります。
これは余計に弾くことを難しくさせ、疲れさせ、また怪我をするリスクも高くなります。
短期的にはお金を節約できるかもしれませんが、子どもはバイオリンを難しすぎると感じ、それによって自信を失い、演奏を楽しめなくなる可能性があります。
少し大きすぎるバイオリンか、数ヶ月間小さいバイオリンを使うか、どちらかを選ぶ壁に当たった時は、必ず小さい楽器を選んでください。
最も有効な解決策は、数ヶ月間小さいサイズをレンタルし、大きいサイズに移ることです。
バイオリンをお持ちでない場合は、下記の表を使うと正確なサイズを理解できると思います。
しかし、実際にお店に行き、そこでスタッフに正確なサイズを測ってもらう事が一番良いです。
バイオリンをお持ちで、いつ次のサイズに移ればよいか知りたい方は、次の質問をご覧ください。
子どもが次のサイズを移行するタイミングはどう判断すればいいですか?
講師は子どものサイズを定期的に確認すべきですが、講師を変えている間(講師がいない間)がある場合は、バイオリンショップに行くと、無料で測ってくれます。
上記のどちらにも当てはまらないが、バイオリンを持っている場合は(お子さんのもの、またはお友達のもの)以下の方法でバイオリンが適切なサイズか確認できます。もしバイオリンを利用できない場合は、上記の表からおおよその寸法を測ることができます。
方法1:弾く準備をする時のように、お子さんの顎の下にバイオリンを置いてください。お子さんにスクロールの端まで手を伸ばしてもらい、指を丸めてペグボックスに触れさせてください。お子さんの手が届かない場合は、バイオリンは大きすぎるという事になります。お子さんの腕が大きく曲がる場合は、バイオリンは小さすぎる可能性があります。上記の写真をご覧ください。
方法2:お子さんの左手を第1ポジション(ナット付近)にして、バイオリンを演奏する姿勢にさせます。お子さんの腕が90度曲がるようであれば、バイオリンは適格なサイズという事になります。もし90度以下に曲がるようならば、バイオリンは小さすぎるという事になります。90度以上曲がるようならば、バイオリンは大きすぎるという事になります。
大人ですが背が低いです。小さいバイオリンで演奏できますか?
いいえ。身長は関係なく、大人はフルサイズのバイオリンを弾くことになります。例えば、以下の有名なソロバイオリニスト2名をご覧ください。
左はErick Friedmanさんで(噂だと193cmあったと言われています)、右は五嶋みどりさん(149cm)です。
ご覧の通り、それぞれバイオリンの持ち方は異なりますが、どちらもフルサイズのバイオリンを使用しています。
一部のバイオリンを持ったことがない初心者の大人は、子どもサイズのバイオリンの方が持ちやすく感じます。
しかし、大人の手は、子どもサイズのバイオリンに対して、大きすぎます。
また、これは指で隣り合った弦を避ける事と、小さな音程を弾く事が難しくなります。また、弓は腕に対して短すぎる事になります。
更に、小さいサイズのバイオリンは、基本的に数年しか使わない事とされているので、高品質を求めて製造されていません。
共鳴箱が小さくなる事もふまえ、フルサイズのバイオリンほど音色も美しくなく、音も弱いです。
左利きですが、左利き用のバイオリンを使用した方が良いですか?
どの点から見ても、使用しなくて良いです。
まず初めに、バイオリンはどちらの手でも関係なく演奏できるので、左利きだからといって、生まれつき不利になる事はありません。Paganiniも左利きでしたが、通常のバイオリンで演奏していました。
右利き用、左利き用に作るメリットはなく、通常は職人もE弦が手前側・G弦が奥側といったスタンダードなバイオリンだけを製作します。
左利き用のバイオリンを製造する職人が数少なく、市場に流通している数も少ない事から、左利き用バイオリンを購入する事すら難しいかもしれません。したがって、左利き用バイオリンを見つけたとしても、通常のバイオリンより希少性がある事から、値段が高く品質も低い可能性が高いです。
また、他の奏者のバイオリンを試奏する事はほぼ不可能であり、オーケストラで演奏する場合も、楽器の向きが他の奏者と反対側になるので、自分だけでなく、他の演奏者の演奏に支障をきたす可能性があります。
バイオリンの音が近所迷惑にならないか心配です。エレクトリック(電気)バイオリンで練習した方が良いのでしょうか?
今後、1度でもアコースティック(木製)バイオリンで演奏するつもりなら、しない方が良いです。
バイオリンを演奏するにあたり、難題の1つは良い音色を奏でる事ですが、それをエレクトリックバイオリンから学ぶことは、本質的に不可能です。アコースティックバイオリンのボディでは、弦の振動を共鳴し、そこで倍音(基本音の1オクターブ上の音)が生まれます。これは、奏者が良い音色を出しているか聴き分ける指標にもなっています。エレクトリックバイオリンは、振動を共鳴しないだけでなく、他のエフェクター(アンプ・ディストーション・リバーブ)が自然なバイオリンの音色を更に曖昧にさせ、音色や抑揚を上達したり聞き分ける事を難しくします。