バイオリンの各部分の名称について
こちらの記事では、各バイオリン部分の名称・意味・用途等について、説明いたします。駒・魂柱・f字孔等にどんな意味や使い方があるか知りたい方に、とっておきの記事となっております。ぜひ、ご覧くださいませ。
- スクロール
- f字孔
- アジャスター
- パーフリング
- ペグボックス
- ペグ
- ナット
- ネック
- 指板
- 弦
- ボディー
- ニス
- 側板
- 魂柱
- エンドピン
- テールガット
- トップ・ボトム・コーナーブロック
- バスバー
- 駒
- テールピース
- サドル
スクロール


スクロールは、バイオリンの先端にある彫刻された部分です。ネックと同じ木材(通常はカエデ材)から削り出されます。スクロールの質量がバイオリンの音に影響している一方で、独特なデザインである主な理由は、職人のスキルを示すこと、美しく見せること、そして収納時に、バイオリンを吊るすために、フックとして使われることもあります。これは昔の羊皮紙を丸めたようなものに似ており、英語でスクロールと呼ばれています。(これが名前の由来)


その他の楽器、特に初期の弦楽器では、スクロールの模様部分は人間や動物の頭の形として彫られており、イタリア語ではまさしく、この部分を「la testa」(日本語で「頭」という意味)と呼ばれています。以下が変わったスクロールの写真となります。



アジャスター


アジャスターは、後少しで弦の音程が合うという時に、音程の微調整をしてくれるものです。
ただ、アジャスターはチューニングできる範囲が限られているため、ペグの代わりにはなりません。殆どのバイオリンには、少なくとも1つのアジャスターが付いており、大抵E弦に設置されています。
一部のバイオリン、特に初心者や子ども用に作られたバイオリンは、チューニングしやすくする為に4つのアジャスターが付いています。子ども用の場合、子どもの手は柔らかくて、ペグで調弦できない事が多いので、これは特に重要なものになります。
上級者の間では、4つのアジャスターが付いているバイオリンを持っている人は、より珍しくなりますが、4つのアジャスター専用に作られたテイルピースが設置されていれば(通常のテイルピースにアジャスターを追加する事とは違い)音に大きな変化を与える事はありません。

このテールピースは初心者向けのバイオリンによく見られる。
パーフリング


パーフリングは、バイオリンの外側の縁にある線の事です。
一見この線は描いているように見えるかもしれませんが、実際はボディに刻まれた溝に、3本の薄い木片がはめ込まれています。
これは外観の美しさを加えるだけでなく、湿度や温度の変化によりボディ(特に表板)の木材が膨張・収縮・変形した場合に、亀裂が入る事や広がる事を防ぎます。
こちらがパーフリングの写真です。

装飾的なパーフリング付きのブレシア市で作られたバイオリンのコピー
ペグ

ペグはバイオリンを調弦するために使われるものです。
ペグは、ペグボックスの穴にはめ込まれており、各ペグには弦を通す小さい穴があります。
ペグをスムーズに回転させるには、ペグと穴の両方が完全に円形である必要があり、特にペグは、ペグボックスの穴と完全に一致するように調整しなければなりません、
調弦中に奏者が穴に押し込みやすいよう、ペグの先は徐々に細くなっており、締め付けると固定されるようになっています。
ペグは一般的に「黒檀」「ローズウッド」「つげ」で作られています。ペグは、無地だったり、はめ込み装飾、装飾彫刻が使われているものもあります。
ペグの大半は、単純に木材を彫刻されたものですが、近年では、従来のペグより物理的な力が必要とされず、ゆっくりとピッチを上げる事ができ、微調整がしやすいギア付きのペグが市場に出ています。
このペグは、アルミニウムやプラスチック製で、バイオリンに合わせて彫られていない為、ペグボックスの穴を大きくする必要がある事が多いです。一度大きく加工した穴は、元に戻す事はできません。
ギア付きのペグはあると使いやすくなりますが、元のペグが上手く機能していれば、一般的にはあまり価値がありません。
こちらが色んな種類のペグの写真です。



ナット

ナットは、指板の端の高さのある部分のことであり、各弦に溝があります。
ナットは弦の高さを維持し、弦を指板に触れさせないようにします。これは振動音や指板の摩擦を防ぎます。
ナットの高さと駒の高さを合わせて、指板の上の弦の高さ(「弦高」と呼ばれる)が決まります。
「弦高」が低いと弦を押さえやすくなりますが、指板に対して不快な振動音が発生してしまいやすくなります。「弦高」が高いと、これとは逆の効果があります。
不快な振動音が出る「弦高」は、使用されている弦の種類や奏者自身によって変わります。例えば、大きな音で演奏すると振動音が発生しやすいので、より高い弦高が必要になります。

Triangle Stringsから転載

ナットをやすりで擦っている様子
ネック

lashofviolins.comから転載
ネックは、バイオリンを弾く時に持つ部分です。
ネック・ペグボックス・スクロールは、全て1枚の木片(通常はカエデ材)から削り出され、その上に指板が接着され、最後に全体部分がバイオリン本体にはめ込みられます。
ネックの下部は「ヒール」と呼ばれ、バイオリン内部にあるトップブロックに蟻継ぎではめ込められ、接着されますが、トップブロックと併せて彫られたネックも存在します。
ネックは、バイオリンの中で唯一、奏者が日常的に触る部分なので、滑らかで、持ちやすく、手が動かしやすい形状になっています。

接着剤が乾くまでクランプで固定している様子
指板

指板は、ナットとペグボックスから、駒に向かって伸びている木片です。
形を変えずに指の圧力に耐えるために、黒壇という非常に密度の高い木材で作られています(ただ、黒壇は希少であるため、代替材料を使って試す職人もいます)。
黒壇は、黒か縞模様となっている場合がありますが、指板を美しく見せるため、黒く染められる事が多いです。これは指板の音や演奏のしやすさには影響しません。
ネックの末端から伸びた指板の部分は、音が弱くなるため、バイオリンのボディには触れていません。
指板は、他の弦を弾かずに、一度に1本の弦で演奏できるよう、側面に沿った凸状になっています。
縦は靴べらのような形をしており、演奏時に、指のすぐ前の位置でも、弦が振動する空間を確保しています。
ギターとは違い、一般的にバイオリンの指板はフレットが付いていません。ただ、稀にフレット付きのバイオリン(need link)は存在します。
こちらが、指板の写真になります。

はめこめられた指板

このタイプの指板は、現代の指板より極めて短い
弦



弦の主な役割は振動する事であり、この振動が駒によってバイオリンに伝わり、ボディーによって増幅される事で、バイオリンの特徴的な音色がうまれます。
弦からの圧力は、駒と魂柱を適切な位置で支え、落ちる事を防ぎます。
弦は、片方はテールピースに締め付け、もう片方はペグを巻きつけます。
弦を適切な周波数で振動させるために、4本の弦はそれぞれ密度と張力が異なり、更に弦のブランドごとに、各4本の弦の密度と張力は異なります。
一般的にE弦は、長さに沿ったどんな位置でも、はっきりした音が鳴るように、他の弦よりかなり細く、とても強く張られています。
また、バイオリンの弦には、かなりの種類があります。
昔は、弦は羊の腸で作られており、その外側に絹を巻く事がありましたが、今は金属で巻かれています。
これらのガット弦は、まろやかな音を出すことが多いですが、湿度や温度の変化にさらされると、簡単に音程が外れてしまいます。またシンセティックコア弦ほどのパワーは出ない事が多いので、現代の奏者の多くはこれらの理由からシンセティックコア弦を選ぶ事が多いです。
弦は自然と劣化しますが、劣化すると音が不明確に聴こえ、バイオリンが一部共鳴しなくなります。
弦は、時々切れる事もありますが、過剰に心配する必要はありません。
この場合、弦の端をテールピースに締め付け、もう一方の端を正しいペグに巻きつけることで、簡単に弦を交換することができます。
駒と魂柱を固定している圧力が絶えず残るように、弦を一度に1本ずつしか外さない事が重要です。
使用頻度と使用している弦にもよりますが、殆どの奏者は、年に1~4回弦を交換します。


ボディー

右側は表板の内側で、f字孔が彫られ、バスバーが接着された状態の画像。
ボディーは、バイオリンの主要部分になります。
これは、表板、裏板、側板と3つの部分に分けて作られています。
ボディー全体の振動から、バイオリンの音を作り出します。
バイオリンの真ん中部分(くびれ部分)は、弓がバイオリンの端に当たらず、自由に動かせるよう、彫られています。
裏板は1枚か2枚の木材を接着したもので、カエデ材で作られている事が多く、表板は、2枚の木材(通常はスプルース材)を接着したものが一般的です。
どちらの木材も厚さは3~4mmと、とても薄いものになります。
こちらがバイオリンのボディが製作されている写真です。

David Finckから転載。

Photo from Jedidjah de Vries. Jedidjah de Vriesから転載。
ニス

ニスは、樹液と亜麻仁油の混合物か、アルコールとシェラック(虫から分泌される副産物)の混合物のどちらかのものになります。
完成したボディーに塗ることで、バイオリンの振動を損なわず、湿度やほこり、汗などから木材を保護します。
また、外観もとても美しく見えます。
ニスが木材に吸収されないよう、通常、最初に基層に塗布します。
基本的な材料は常に同じですが、様々な異なる製法があるため、バイオリンの外観がとても異なることがあります。
稀に、最後の仕上げとして、職人がニスの上に飾りを加えることもあります。
こちらが様々な珍しい飾りのバイオリンの写真です。


側板


バイオリン職人Kevin Leeからの写真。
バイオリンの側面のことを、側板といいます。
側板は、バイオリンの表板と裏板を合わせ、内側はバイオリンのトップブロック・ボトムブロック・四隅のコーナーブロックで支えられています。
木材から削り出して形を作る大きな部分とは異なり、バイオリンの側板は、熱で曲げてブロックに接着することで、最終形態の形を維持する役割を担っています。
側板の上面は、バイオリンの表板と裏板に直接接着できないほど薄いので、ライニングと呼ばれる小さな細長い板を、側板の両端に接着し、ライニングがブロックとともに、表板と裏板に接着しています。
こちらは、側板が作られている写真です。

MS Prussia Coveから転載。

Derek Roberts Violinsから転載。
魂柱

写真の上部ではバスバー、真ん中では魂柱、そして奥では、エンドピン用の穴があるボトムブロックが見える。
魂柱は、バイオリンの内側にあり、駒の高音側の後ろに位置する小さなダボの事です。低音側のバスバーとは対称に位置しています。
バイオリンに魂柱を接着させると、魂柱の入れ替えが難しくなり、調整するのも不可能になるため、魂柱は接着されていません。弦が駒にかかる圧力だけで魂柱は固定されています。
魂柱は、駒やバスバーのように、1つ1つのバイオリンに、正確にフィットするように作られています。
魂柱は、①バイオリンの上面を支えること②魂柱の長さと位置の両方が、音の力強さと音色に大きい影響を与えること、といった重要な役割を果たしています。
魂柱の位置をたった0.01mm動かしただけでも、バイオリンの音は急激に変わります。
魂柱は、他言語では楽器の「魂」と呼ばれるほど、音にとって非常に重要なものです。
湿度と温度が変わると、魂柱の高さの変化はボディの高さの変化より小さいので、ボディにかかる圧力が影響され、季節によってバイオリンの音が変わる事があります。このため、プロの演奏家は、季節ごとに職人に魂柱を調整してもらう事がありますが、これは個人の好みに基づくもので、決して強制されるものではありません。


駒

駒は、バイオリンの弦を支える部分になります。
数ある役割の一つとして、バイオリンのボディーに振動を伝える役割があり、そこで増幅された音はf字孔によって放出されます。
通常、駒は2つのf字孔の刻み目の間に位置しています。
「kidney」と呼ばれる穴が彫られているため、駒の構造が弱まらず、質量が減らされます。
これにより、弦からの23kgの圧力が支えられつつ、減音効果が軽減されます。
駒の表はやや曲がっていますが、裏は真っ直ぐになっています。
弦は駒の後ろより前の方が長いので、駒を前に引く力が後ろに引く力より強くなり、この駒の形状のおかげでバランスの釣り合いがとれています。
駒の上面は、誤って隣の弦に触れることなく、1本の弦で演奏できるように曲がっています。
曲がりの強い駒は1本の弦で弾きやすくなり、曲がりの弱い駒は複数の弦で弾きやすくなります。
「弦高(=指板上の高さ)」は、ナットの高さを合わせた駒の高さによって決まります。
「弦高」が低いと弦を押さえやすくなりますが、指板に対して不快な振動音が発生してしまいやすくなります。「弦高」が高いと、これとは逆の効果があります。
不快な振動音が出る「弦高」は、使用されている弦の種類や奏者自身によって変わります。例えば、大きな音で演奏すると振動音が発生しやすいので、より高い弦高が必要になります。
これらの変動する部分を調和するため、駒はバイオリンごとに削られています。
また、駒の足も、バイオリンの表板の曲面に合わせて削られます。
駒の足は、糊や接着剤などで調整できず、交換するのも難しいため、弦の圧力だけで固定されています。
この圧力が、重要な理由はもう一つあり、魂柱(駒の低音側の足のすぐ後ろに位置している)が倒れないようにするため固定しています。
そのため、4本の弦全てを一斉に取り外すと、駒も魂柱も倒れる可能性が高いため、これはお勧めできません。

弦のチューニングにより、駒の上部が徐々に引っ張られ足が水平でなくなるため、演奏者は数日おきに駒をチェックし、必要に応じて駒の裏面が表板と90度の角度になるよう位置を戻し、足がバイオリンに対して水平になるようにする必要があります。
長期間に渡って、駒を調整しない場合は、駒は徐々に歪んでいき、いずれは交換する必要になります。
よく見られるブランドの駒には以下のような「blank」があり、これはどのバイオリンにも合うようにまだ削られていない状態となっています。



テールピース


テールピースは、バイオリンの下部で弦を固定する細い木片のことです。
これはアジャスターを固定するもので、テールガットによってバイオリンに取り付けられています。テールガットは、サドルの上にのり、ボトムブロックに固定されたエンドピンに巻きついています。
テールピースは、全長にわたって、張られて浮いており、バイオリンのボディに触れることはありません。
テールピースは、通常、ナツメ、黒壇、マホガニー、ローズウッド、ツゲ等の木材やプラスチックで作られ、また色んな形状で作られます。


駒からテールピースの距離は、テールガットを長くしたり短くしたりする事で調整できます。
テールピースには、アジャスター付きのものと、アジャスター無しのものがあります。
どちらのタイプも同じように弾けますが、アジャスター無し用に作られたテールピースにアジャスターを付け加えることはお勧めしません。理由は、アジャスター無しのテールピースは、重量を増やすために設計されていないため、音がこもってしまうからです。



